求職者の記憶に残るコンテンツとは

企業がプロモーション、販促・採用活動のために動画を利用することは、現代においては一般的です。

筆者の勤め先は印刷会社ですが、通常のデザイン・印刷業務のほかにホームページの初期制作や、動画制作も担っており、栃木県内の企業様からお声がかかります。

本コラムは、ディレクターとして求職者向けの動画制作に関わった初めての経験談をまとめるとともに、動画と文字の有用性を考えました。

YouTubeやSNSの台頭で、動画を撮影する、編集するツールは増え、企業の広報活動、採用活動でも利用されています。動画を導入する企業が増える一方で、自社制作で足踏みしている企業は多いでしょう。

そのような、情報発信に悩み抱える方向けのコラムでもあります。動画作成の手順や工程を知りたい方は、今後のコラムもご覧ください。

1.動画の文字は記憶に残らない?!

筆者が関わったのは、土木・建設会社の求職者向け動画制作でした。

コンセプトは「地元に根付いた会社」で、会社に近い範囲の学生に向けてのプロモーションとして、カジュアルな動画にする、という考えで制作を進めました。

動画の内容は、主に入社2~3年以内の社員のインタビューでした。

撮影が完了し、大方の編集を終えた段階で、インタビュー動画のテロップを作成しました。テロップはインタビュイー(インタビューを受ける側)の言葉を一度に表示せず、発する言葉と同時にテロップが出るという仕様です。

これは違和感なく、動画を見てもらう工夫の一つです。動画を見るとき、人間は自然に文字を目で追ってしまうので、文字を一度にすべて表示すると、動画の尺が余り、言葉が理解しづらくなります。

テロップの入力作業を終え、無事に動画は完成です。何度も繰り返しチェックを行いました。
動画の流れ、音声、言い回し、冗長な表現の有無、そしてテロップ。内容に問題はありませんでした。
動画のコンセプトも打ち出せる動画ができました。動画の完成度は高い。しかし、違和感が残りました。

テロップの内容が記憶に残っていないのです。テロップは、見た人が、動画の中の人が話す言葉を理解するためのツールでしかない。
文字は、動画の中で絶えず流されて更新され続け、見る人の印象には残りづらい。新しい発見でした。

2.動画の情報量 ー「3Vの法則」の正しい解釈ー

ここで動画と文字の情報量について触れておきます。1分の動画には、180万文字分の情報が含まれるという説があります。

これは米・フォレスター・リサーチ社(アメリカに本社を置き、ビジネス、テクノロジー分野において調査・分析サービスに従事)のジェームス・マッキヴィー博士によって提唱されました。

180万文字は数が膨大で想像しづらいですが、比率でいうと動画は文字の5000倍の情報量を含むともいわれています。
さらに動画における記憶の定着率は、文字の2倍であるといわれています。
またインタビューなどの、会話中やメッセージ中心の動画においては、表情や声のトーン、しぐさなどの雰囲気から性格を判断できるという長所があります。

動画と文字の情報量の話題になると、決まって「3V(メラビアン)の法則」が挙げられます。

簡単にいうと「ある環境下において、言語情報(Verbal)は7%、聴覚情報(Vocal)は38%、視覚情報(Visual)は55%、記憶に残るとする」という説で、日本では新入社員のマナー研修や面接対策セミナーで「見た目が一番重要」あるいは「話の内容よりも喋り方のテクニックが重要」という解釈で使われます。

しかし、本来の実験は「メッセージの送り手がどちらとも取れるメッセージを送った」場合、「メッセージの受け手が声の調子や身体言語といったものを重視する」という事を指し、コミュニケーション全般においてこの法則が適用されるという解釈はメラビアン本人が提唱したものとは異なります。

「文字よりも動画が優れている」と説明する根拠としてインターネット上でもよく見かけますが、正しい解釈ではないので注意しましょう。

3.文字×動画 ⇒ 強力なコンテンツ

動画は、情報量と記憶への残りやすさ、そして採用活動における学生からのニーズという面で文字よりも優れた伝達手段であるといえるでしょう。

それでは、動画だけがあればよいのでしょうか。ここまでをまとめると、テロップは見た人の記憶に残らない、動画は文字よりも情報量が多い、ということになります。しかし、文字(または静止画を併用して)の動かない情報を置くことは必須です。

企業が作成した会社紹介、事業紹介の動画を考えてみましょう。一人の求職者が繰り返し視聴することは考えづらく、動画が文字の2倍の確率で記憶に定着するとしても、その割合は動画全体の20%に過ぎず、記憶するのは一部分です。動画は抽象的な印象を与えることしかできないのです。

企業の採用情報でみかける文字主体のインタビューは、文字に書かれていることが全ての事実であり、何度か読み返すことで理解を深められます。
採用試験の応募や、サービスの利用といったアクションを誘発させるには、事実として動かないコンテンツが必要でしょう。
内容重視のコンテンツについては、文字で書かれている方が伝わりやすいです。

筆者は営業活動も担当するので、会社の人事、総務などの採用活動担当者と関わる機会が多くあります。

従業員が集まらないから「プロモーション動画が作りたい」と言う方が多くいますが、そもそも情報発信の機会が少なすぎる例や、動画を作ることに固執しすぎている例が多くあります。まず、ホームページに十分な情報があり、それを発信する土台があって、それに付随した動画コンテンツがある。動画はそうやって成り立つコンテンツではないでしょうか?

コラム冒頭の動画作成で関わった会社は、もともと静止画とテキストベースを使った雑誌記事風のインタビューページを置いています。
このことは、動画が完成した後に、ホームページを改めて見直したことで発見しました。
この会社においては、今回動画のコンテンツを新たに置いたことで、求職者が欲しい情報に厚みが増したといえるでしょう。

4.販促、認知、採用活動のツールを検討する皆様へ

本コラムに示した動画と文字の有用性を加味して、自社に適したツールの導入を検討してみてください。
また、動画の必要性について、情報発信のためのコンテンツについて、お悩みの方はお気軽にご相談ください。

この記事を書いた人:庄司 理
栃木県内の高校生を主とする学生向けの、地元企業紹介メディア”COURSE”の企画・営業を担当。COURSE事業は2022年で5年目。若いうちに「働くとはどういうことか」、「社会に出てどう生き抜くか」を考えるきっかけを提供。栃木県内の高校と、数百の企業を訪問、課題解決策の提案を行う。

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